2人が本棚に入れています
本棚に追加
どこの睡眠学習だ、と空井正は心の中でボヤく。
「いや違う。瞼は閉じていたが、本気で真面目に聞いている。その証拠に――――」
空井正は長椅子に寝そべった状態で、先ほど彼女が話していた事柄を、ざっくりと大雑把に簡略化して口にした。
その内容は、簡単な言葉で説明も短いながらも、ちゃんと話の芯を捉えられており、事前に話を全く知らない人に伝えたとしても、ほぼほぼ内容を理解できるようにされていた。
理空は彼の話を聞きながら、大層満足そうに顔をほころばせた。
人が話していたことを大雑把に簡略化し、それを全く無知の人にも理解できるよう相手に伝えるには、まずその相手がしていた話を、要点を押さえながら正確に聞いておかなければならない。
そのことを、理空はきちんと理解していた。
もちろんのこと、空井正の方も認知した上で行っている。
しかし彼の場合は、長い文章を口に出すことが面倒くさいということも理由にはあったけれども。
理空は、テンションが上昇した状況で、しかし、いかにも何も気にしていないというような風を装って、彼に最初と同じ質問をした。
「じゃあ、もう一回聞くけど……【青春】って、何だと思う?」
その問いに、空井正は首をひねって少し間を置いた後、適当な雰囲気で自答を告げた。
「暇な時間?」
空井正は、理空から『満足してないな?』という空気を感じた。
最初のコメントを投稿しよう!