3章 蒲公英(たんぽぽ)色@カンバセ―ション

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 形のいい玉子焼きを始め、アスパラのベーコン巻や、彩りを考えて添えられたであろうプチトマト。姉さんのそれにも負けない色合いで、その盛り付け等から、マメでいて、非常に器用なことが窺える。 「だけど、僕の姉さんの弁当の方が美味しそうですね」  なにゆえそんな対抗心が浮かび上がったのかは、わからない。もしかしたら本心だったかもしれないし、姉さんの計算された調教のせいかもしれない。  どちらにしても、僕がここで姉さんの弁当を見せびらかしたいと思いさえしなければ。いや、この人たちとお昼を食べようとさえしなければ。僕は、ここで一生もののトラウマを背負うことはなかったかもしれない。  膝の上に乗せていた弁当箱の蓋を、おもいっきり開き――おもいっきり、後悔をした。 「ふむ。確かに、この弁当ほどの愛情は、創のにはないかもしれないな」 「つくり、まけた……」
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