3章 蒲公英(たんぽぽ)色@カンバセ―ション

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 どのタイミングから忘却していたのか、今となってはわからないが、雪城さんと会った時からもうすでに、弁当のことは意識から離れてしまっていたのかもしれない。  が、そんなことはどうでもいい。  このタイミングでは、この白飯の上に海苔で綺麗に作られたILOVE八重ちゃんの文字は、消せないし消えない。 「あの、これは――」  誤解しかしていないであろう二人の誤解を解こうと試みるが、目の前には真実しかないので、取り繕う言葉が見つからない。 「大丈夫だ少年。その弁当は、正直羨ましく思う」 「あやちゃん、こんどつくりも、やってあげる」 「おっ、本当かい? それは楽しみだ」 「いやっ、だからですね?」 「全く、この愛されものめ」 「あいされものめー」  結局この後、誰も僕の言い訳を耳に入れてくれることはなく、二日続けて僕は羞恥心に苛まれながらの昼食となった。  今日こそは、絶対に姉さんに言おう。  これは、僕の精神面の死活問題である。
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