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「意味ない?」
「だって、てんこーせー、が、つくりのなまえを、よぶこと、なんか、きっとない。だから、しってもいみ、ない」
「みんなが、きみに恐怖しているから?」
「――えっ?」
「今日一日、僕はきみのことを見ていた。みんなからいないように扱われ、それをきみは受け入れている。いや、受け入れているんじゃない。諦めている。違う?」
「どうして、わかる、の?」
「僕も、同じだった」
瞬間、彼女は目を瞠った。
恐らく、このタイミングで彼女は僕が教室で彼女を見た時に感じたものを、感じ取ったのかもしれない。
彼女は、僕から顔を逸らすようにしながら、より小さな声で、囁くように呟いた。
「ゆきしろ……つくり……」
「僕は、廻栖野八重だ」
無音さんや拵先生の感覚でいうなら、僕とこの子の出会いは、運命だったのだろう。
この依頼をきっかけに、この出会いをきっかけに、僕はかけがえのないものを。
生まれて初めて、なにを犠牲にしても護りたいと思う他人に、出会うこととなった。
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