3章 蒲公英(たんぽぽ)色@カンバセ―ション

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 思えばこの時から、姉さんは僕に優しくしてくれた。  僕からしてみれば、こんな姉さんが出来て、幸せである。内緒だけど。 「聞いてる?」  不意に、脳内で浮かんでいた昔の思い出とは違う、外側から聞こえる声が鼓膜を揺らす。 「ごめん、聞いてなかった」 「もう。なにか考え事?」  料理を運び終えた姉さんが、僕の顔を覗き込むようにしながら、首を傾げる。 「いや、そういえば、姉さんと会ってから随分と経つなぁって」 「そうだね。もう、八年かぁ。あの頃の八重ちゃんは本当に可愛かったなぁ。私、ショタでもいけるって思ったね」  どこかから取り出してきた写真をうっとりと眺めながら、そんな恐ろしいことを漏らす姉さん。その眺めている写真がなんなのか気になったので、立ち上がり覗き込んでみると、それは僕が五歳の時に撮った七五三の写真だった。 「ちょ、なんでそんなもん持ってんだよ! しかも、その時まだ出会ってねぇし!」
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