3章 蒲公英(たんぽぽ)色@カンバセ―ション

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 本当はこういうことを言葉にするのは苦手だし、口にしてしまうとどうしても自分自身の本心である筈のそれが口先だけの虚言に思えてしまうから嫌なのだが、言うしかないだろう。そうでなくては、相手も納得することが出来なくなってしまう。  僕は、空になった茶碗をテーブルの上に置き、手を合わせてから口を開いた。 「ご馳走様。姉さん、今日も美味しかったよ」 「お粗末さまでしたー」  投げやりに返ってくる言葉。無論、冷たくあしらわれたくらいで諦める程、僕も打たれ弱くはない。 「いつも、僕の為に美味しいご飯を作ってくれて、ありがとね」 「……」 「さっきの話だけど、確かに僕は学校で無音さんと姉弟で通すことを了承した。半ば強引にそういう話になっていたけど、今後の仕事を考えた時、それが一番効率のいい方法だと考えたから。でも、やっぱりそれは、あくまでフリだよ」
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