日課とか言う不慣れ【豺×聡】

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今は当たり前になったおやすみのキス。 もちろん僕からしたことはない。いつも豺からだ。 こういう恋人らしいことが出来るようになったのもつい最近で、ファーストキスなんかは恋人になってから3ヶ月後の事だった。 僕が「いいよ」と言うまで向かい合ったままずっと待ってる豺の姿はそれはもう主人の命令には絶対服従の忠犬そのものだった。 あの日も確か、寝る前だったな。 いきなり豺が「キスしてもいいか」なんて聞いて来て、 僕はもちろん断ったのだが。 その日は全然豺が引き下がらなかったから仕方なく、僕の心の準備が出来るまで待ってもらった。 多分、二時間くらいはああしてたと思う。 べつに豺とキスがしたくなかったとかではなく、ただ…。 いや、やめよう。思い出すと顔から火が出そうになる! 「豺!寝るぞ」 勝手に一人で過去を思い出して恥ずかしくなった僕は豺に声をかけ、返事も待たずに電気を消してベッドに潜った。 「聡、そんなすぐ明かりを消されたら何も見えない」 少し不機嫌そうにぼやきながら、ギシ、とベッドを軋ませ隣に来る豺。 「のろまなお前がいけないんだろう。」 「聡、今日はしないのか」 しないのか、と聞いたのはもちろんソレの事。 「…勝手にしろ」 僕の返事を聞くと、豺は少しも迷わず僕がかぶっていた布団を剥がす。 豺の前髪が自分の額に掠めるのを感じ、僕はぎゅっと目を閉じる。 少しの間の後、唇に温もりを感じた。 「…おやすみ聡」 「…ん。」 昔は二時間かかったこのやり取りが、今は当たり前のように数秒で終わる。 でも、どうしても。 その数秒後の心拍とか、顔が熱くなるのとか、それだけは昔と同じで。当たり前にならない。 そーゆうのを悟られないように、僕はいつも豺に背を向けて眠りにつく。もちろん今日も。
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