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「道星、好きって言ってよ」
優にそう言われるたび、つい俺は「嫌だ」と答えてしまう。
それはいつもの事だから、優は、はいはい、って俺の頭を撫でる。
俺は黒音と燦に、アドバイスを貰おうと思って2人の部屋に来た。
「黒音はさ、燦に好きって言うの恥ずかしくないの?」
「恥ずかしく無いわけないよ!でも、好きだから好きって口に出ちゃう、えへへ」
そう言って頬を赤らめる黒音を見て燦はデレデレ?ニヤニヤ?してる。相変わらずきもい。
「黒音、俺さ、優に好きって言いたいけどなかなか言えなくて。ちゃんと言ってあげたいし、言いたいんだけど恥ずかしくて。」
「そっかー…兄さん元々恥ずかしがり屋さんだもんね」
うん、と言おうとして、それまで黙ってた燦が口を挟む。
「ま!好きって思ったらその時に好きってストレートに!純粋に!伝えるのが一番だろ!」
燦が言うと説得力ないなぁ。
「過去に黒音が振り向いてくれないからって無理矢理襲った人に言われたくない」
「うぐっ…」
正論を述べられ落ち込む燦を黒音が撫でる。
「うーん…黒音、ついでに燦も。ありがと。もう少し自分でがんばってみるよ。」
「うん!でもね兄さん、マスターは兄さんが自分の事好きってわかってると思うよ!」
「そうかな…うん、ありがとう。もうすぐ優の執務終わる時間だし、書斎に戻るね」
がんばってみる、とは言ったものの書斎に戻る足が重い。
黙って出て来ちゃったし、優怒ってるかなぁ。
書斎の扉をノックする音も心なしか小さくなった。
「どうぞ」と声が返って来て、俺は扉を開ける。
「おや、道星じゃないか。どこ行ってたの?」
優は怒ることはしなかったけど、少し心配そうにこちらを伺う。
「黒音のところ。ごめんね黙って出てっちゃって」
「ああ、そうだったんだ。丁度執務も終わったし、少しお茶にする?」
「うん」
ああ、いつもの感じだ。
でも、でも次に好きって言われたら、俺もちゃんと言おう。
いつもみたいにソファに座って2人でお茶をする。
でも、さっきからなぜかすごく見られてる。なんだろ、髪の毛はねてるとか?
「優、なに?」
「ん?可愛いなって思って」
調子よく優が笑う。
「ばかじゃないの」
「はは、好きだよ道星」
「あ、」
俺も、って答えようとして、でもやっぱり言葉に詰まる。
「道星?」
好きって言うのは、やっぱまだ恥ずかしい。
だから代わりに、
「優、キスして」
今はこれで。
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