第1章 プロローグ

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 衣装係がウエディングドレスを運んできたのだ。  繊細な刺繍のほどこされたクラシカルな純白のドレス。  自分で選んだのだから初見ではないが、改めてみると感慨深い。  しかし、次の瞬間ぐらりとドレスが傾いたかと思うと、長いトレーンを豪快にはためかせ、床に転がった。 「す、すいませんっ!」  不慣れなアシスタントさんが裾にひっかかり、スタンドごと倒してしまったのだ。  真っ青になった衣装係とアシスタントが、おでこがひざにつくのではないかというくらい、ペコペコと頭を下げている中、 私の意識は別のところに飛んでいた。 (この光景どこかで見たことが…) (あぁそうだ、あの時)  ずきんと重い痛みが胸をつき、それを合図に八年前の記憶が鮮明に蘇ってきた。
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