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「管理部の子は篠田君目当てだね。人気あるね、彼は」
なにやら奇声を上げた管理部女子を見て課長が苦笑いした。
チラッと窺うと、篠田の腕に女子がくっついて騒いでいる。
課長に合わせて上辺だけでも篠田を誉めればいいものを、どうも口が言うことを聞いてくれない。
「篠田君がというより、独身男性はみんな対象ですから。特に米州部は」
大半の海事女子の夢は、これだ。
有望な男性社員を捕まえて、
彼の赴任で寿退社。
それも米州部か欧州部なら極上。
会社側も海外赴任が多い男性社員にそう仕向けている面もあり、海事には縁故入社の腰掛け組が多く配属される。
彼女達の男の争奪戦は、
一種の生存競争なのだ。
「でも彼は引っ張りだこだと思うよ。アメリカの大学卒で、ルックスもいい。条件最高でしょ」
「彼、優秀なんですね」
そんな経歴、知らなかった。
どうせ嫌味ったらしくMBAなんか持ってるんだろう。
……なんだか気に食わない。
「でも、人って経歴や外見だけじゃないと思います」
女癖悪いとか嫌味っぽいとか、
中身なんて分からないんだから。
正面からけなしたいのを我慢して、勢い良くグラスを空けた。
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