壊される夜ー1

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「管理部の子は篠田君目当てだね。人気あるね、彼は」 なにやら奇声を上げた管理部女子を見て課長が苦笑いした。 チラッと窺うと、篠田の腕に女子がくっついて騒いでいる。 課長に合わせて上辺だけでも篠田を誉めればいいものを、どうも口が言うことを聞いてくれない。 「篠田君がというより、独身男性はみんな対象ですから。特に米州部は」 大半の海事女子の夢は、これだ。 有望な男性社員を捕まえて、 彼の赴任で寿退社。 それも米州部か欧州部なら極上。 会社側も海外赴任が多い男性社員にそう仕向けている面もあり、海事には縁故入社の腰掛け組が多く配属される。 彼女達の男の争奪戦は、 一種の生存競争なのだ。 「でも彼は引っ張りだこだと思うよ。アメリカの大学卒で、ルックスもいい。条件最高でしょ」 「彼、優秀なんですね」 そんな経歴、知らなかった。 どうせ嫌味ったらしくMBAなんか持ってるんだろう。 ……なんだか気に食わない。 「でも、人って経歴や外見だけじゃないと思います」 女癖悪いとか嫌味っぽいとか、 中身なんて分からないんだから。 正面からけなしたいのを我慢して、勢い良くグラスを空けた。
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