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定時を過ぎると米州部もアジア部も皆そわそわと仕事を終え、早く片付いた者からぞろぞろと店に移動し始めた。
結局小椋さんは一日中あの調子で、定時になると今度は篠田の退社タイミングに合わせようと後ろばかり見ていた。
彼女の席は梨香子のお向かい。
篠田を見るには振り向かなければならないのだ。
「フフン」
私の席からは篠田が見えるわよ?
いや、見たくはないけれど。
小椋さんは篠田と同期だから、
私の二年後輩にあたる。
就職氷河期のピークに入社したとあって、出身は有名私大だ。
けれどプライドばかりで地道に切磋琢磨する姿勢に欠けていて、評価される表の仕事しかしない。
特にアジア地域は現地からあがってくる数字に誤りや抜けが多く、データ集計にはかなり苦労する。
今まで彼女はそうした地味な作業を総合職の仕事ではないと拒否してきたようだけれど、私が着任してからは有無を言わさずやらせていた。
それもあって彼女は私が大嫌いらしい。別にそれで結構だけど。
彼女は希望していた欧州部に配属にならなかったことを未だに根に持っていて、アジアを毛嫌いしていた。
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