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「お先ね、美紀」
「お疲れさま。また月曜ね」
梨香子が退社すると、残っているのは宴会に遅れていく管理職ばかりだ。
「亀岡さん。まだ終わらない?」
しばらく残務を片付けていると、羽鳥課長がコートを羽織りながら声をかけてきた。
「終わるなら一緒に行く?」
「あ…もう少しかかりそうです」
「そう。じゃあ先に行ってるね。
席とっておくよ」
「ありがとうございます」
柔らかな笑顔と香りを残して去っていく羽鳥課長の背中を見送りながら、やっぱり怜に似てるなぁと思う。
先週ぶつかった時、どうやら私は課長のシャツに口紅をつけてしまったらしい。
給湯室から部屋に戻ってみると、課長のシャツに口紅を見つけた米州部長が大喜びで騒いでいた。
慌てて私が事情を説明してその場は収まったけれど、篠田の視線が痛かったっけ。
時計を見ると、
開始から三十分が過ぎていた。
どうしようかな…。
怜と深沢さんはもう来ているだろうか?
ええい、篠田に何と思われようと、羽鳥課長と行ってしまおう。
「羽鳥課長!
やっぱりもう行きます!」
大急ぎでデータを保存しながら、
部屋を出かけていた課長を呼び止めた。
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