3165人が本棚に入れています
本棚に追加
「しんどくないんですか?」
篠田の冷たい目が、全てを見透かすように見つめてくる。
「そんなに無理して」
皮肉っぽい台詞にカッと頬が燃えた。
「心配して何が悪いの?
彼女は完全アウェーなのよ。
経験だって人間関係だって」
「本人が望んだことです。
自分で対処すればいい」
「そんな正論、女子の陰湿さを知らないから言えるのよ。
彼女が少しでもスムーズに馴染めるようにしてあげるのが…」
そこで口籠もった。
これはきっと、二人への贖罪だ。
私は怜と彼女が結ばれるのを邪魔して苦しめてしまったから。
でもこれは彼女のためというより、正しい私でありたいという自己満足なのかもしれない。
「彼女を支える必要があるなら、片桐主任に任せるべきでしょう」
篠田の静かな指摘は、
私の一番痛い部分を突いた。
じわじわと滲んできた涙を、
顔を背けて瞬きで散らす。
最初のコメントを投稿しよう!