壊される夜 ー2

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カランカランと揺れて響いていた氷の音が、カチャッとグラスを空ける乾いた音で止まった。 「そんなにあの男がいいですか? 何年も一緒にいた女が、真っ青な顔で無理して笑っていることに気付こうともしない男が」 「…怜は悪くない」 「怜、ね」 フッと鼻で笑うのが聞こえた。 「片桐主任は悪くないの。 だって、彼は…」 本当は私、分かってる。 怜自身もきっと気付いていない事実に。 怜が、私のことを本当に愛したことなんてなかった、って。 彼はただ、私が恋人だから精一杯大切にしてくれただけ。 「昔からそうでしょう。 上海の赴任前だって、先輩の本心に気付きもせず、爽やかに笑って背中を押してたじゃないですか」 「私の本心?」 「行くなって止めて欲しかったんでしょう?渡航前、戸川に抱きついて泣いたのは」 「やめてよ!」
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