壊される夜 ー2

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*** 店を出ると、もうすぐ二月を迎える冬の底冷えが全身を包む。 刺すような空気に、泣いてメークの落ちた頬が痛かった。 「あのお酒、美味しかった」 元来た路地を篠田と並んで歩く。 「カクテルに詳しいの?」 「いや全く。俺はカクテル飲みませんから。女性向きでアルコール低めって言ったらあれが」 あれから結局、気の済むまで泣くのに付き合わせる形になった。 私は最後まで篠田に泣き顔を見せることなく顔を背け続け、彼はただ黙って隣に居るだけだったけれど。 「あの紫色ってスミレ?何のお酒がベースになってるの?」 「説明聞きましたけど、先輩が怒りそうな名前でしたよ」 「何て名前?」 「パルフェ・タムールっていうスミレを漬け込んだリキュールがベースらしいです」 「パルフェ・タムール…?」 すなわち、フランス語で完全な愛という名。 「嫌味だわね!どうせ失恋したわよ、完全な愛にはほど遠く」 「ほら、そう来ると思った」 隣で篠田が苦笑いした。
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