2896人が本棚に入れています
本棚に追加
「入社以来ずっと、優秀な成績でアジア部を支えてくれた君には本当に感謝してるよ」
これが単なる誉め言葉ではなく、次に来る叱責の枕詞であることは予想できた。
「彼女には僕も頭が痛いんだ。
意欲、態度すべてにおいてね。
直属で指導する君の苦労はなおさらだし、今回も君に非はなかっただろうと思う」
「……」
「だけど、君はもうじき主任から課長補へ昇格するよね。
今までと同じ立場じゃない。
組織では、どんな部下でも使いこなさなければ、上に立つ者の度量を問われてしまうのが現実だ」
「…はい」
「妥協しない姿勢は結果を生むけど、上司には柔軟性も必要だ。
彼女が逆らうのは、君の完璧主義への反発があるんじゃないかな」
「……はい」
ここまでは納得できた。
反論したい気持ちより、自省する気持ちの方が大きかった。
だけど、部長の次の言葉には素直に返事することができなかった。
最初のコメントを投稿しよう!