2896人が本棚に入れています
本棚に追加
帰る道々、車を走らせながら物思いに耽る。
相原君の失言に悪気はない。
彼は私のことを心もプライドも鋼鉄製の、装甲車のような女だと思っているらしい。
弱い女になど見られたくないから、別に構わないのだけど。
でも…。
落とされた言葉は否定できない。
相手は彼女持ち、
しかも結婚する気ゼロの非情男。
“セフレは彼女の他に寝る女”
“男にはうってつけ”
あの朝、彼に何の話もせずに逃げ出して良かったのよ。
赤恥かくのだけは嫌だもの。
そう思うのに、どうして心はしくしく痛むのだろう。
気付くと、いつのまにか自宅へ向かう曲がり角を通り過ぎていた。
夕方の混雑でUターンもできずに、二子玉川方面に続く国道を仕方なくそのまま進む。
怜も住むあの街が、私の中でいつのまにか篠田の住む街へと変わっていることに気付きながら、Uターンできる場所を探して。
「今はアメリカよね…」
そうでなければ、
週末は彼女と過ごすのだろうか。
胸に走る痛みに首を振る。
好きになんてなりたくない。
バカな恋なんてしたくない。
なのにどうして、あの声、あの温もりを忘れることができないの?
最初のコメントを投稿しよう!