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週明け、思いがけない悶着…
というのか災難が降り掛かった。
それは昼休みを過ぎた午後。
ビジネスランチから席に戻った私は、メークを直そうとポーチを手にお手洗いに向かった。
途中の壁に貼ってある海外出張者の現況表をチラッと確認すると、篠田の帰国は予定通りの水曜日。
帰ってきたらまた頭を悩ませることになるのかもしれないけれど、あの席に彼の姿がないのは正直物足りなかった。
もう消えて見えなくなった胸元の跡に、服の上からそっと触れる。
…だめだめ。
三度目はない。
彼はただ私に刺激を求めただけ。
女王とか威張りくさってる女が泣いて壊れるのを……、
“壊れればいい”
「……やだ」
あの時の彼の声を思い出して、
顔と身体がカッと火照る。
深呼吸しながら女子トイレに足を踏み入れると、小椋さんがいた。
「ただいま、小椋さん」
随分と遅いお化粧直しはまたサボりなのかしらと思いつつも、横に並んで鏡越しに笑いかける。
ところが、返ってきたのは低く吐き捨てるような声だった。
「…何が“ただいま”よ」
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