セフレの定義

16/22
前へ
/22ページ
次へ
衝突のあった翌日。 あれから小椋さんからは特に何もなくずっとおとなしかったので、私の中であのトイレでの衝突は過去の出来事になりつつあった。 けれど夕方、梨香子も小椋さんも退社して人がまばらになった頃、部長から声がかかった。 「亀岡さん、ちょっといいかな」 ノートと筆記具を持ち立ち上がった私に部長が手ぶらでいいからミーティングルームへと言った時点で、嫌な予感はしていたけれど。 「小椋さんのことなんだけどね」 部長は席に座るなり単刀直入に切り出した。 「昨日の夕方、彼女から異動させてくれと申し入れがあってね。 それはいつものことなんだけど」 「……はい」 「いつもはアジアよりアメリカがいいだとか、その程度の理由なんだけど、今回は違ってたんだよ。 亀岡さん、心当たりあるかな」 「…はい。申し訳ありません」 臍を噛む思いで頭を下げた。 「昨日、彼女と言い争いになってしまって。私が行きすぎた発言をしたのが原因かと思います」 「…やっぱりそうか」 部長は一呼吸置いてから、言葉を選ぶようにして話し始めた。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2865人が本棚に入れています
本棚に追加