セフレの定義

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でも、痛いほどプライドが傷ついた今だけは、怜達を引き合いに出されたくはなかったのに。 傷が癒えかけたと思うとまた破られ、痛みに慣れたと思うと塩をすりこまれる。 でもこれが社内恋愛というもの。 あまり長く部屋に残っている訳にもいかず、変わらぬ表情を努めて席に戻る。 でも、いつもなら跳ね返すのに、 なんだか無性に泣きたかった。 些細な注意なのに、仕事も恋愛も置いていかれたような挫折感で、頑張って前に前に進んできた自分が色褪せて見えた。 こんな時、梨香子と気晴らしに飲みに行けば済むのだろうけど。 でも今、疲れた心が見つめてしまうのは、誰もいない正面の席。 どうしてだろう? 彼に寄り掛かりたかった。 そうすればきっと、 余計に傷つくと分かっているのに。
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