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合同新年会の翌週――
つまり、篠田と二度目の夜を過ごした翌週の週末、私は梨香子宅のランチに呼ばれていた。
「ごめんね、妊婦さんに料理させちゃって。何かお手伝いない?」
小さなキッチンでくるくると作業する梨香子に声をかける。
最近は体調もいいらしく、元気いっぱいだ。
「全然平気だよ。もうすぐ出来るからそっちで座って待っててよ」
「じゃあ運ぶ時は言ってよ?」
渋々、梨香子が指差すリビングのソファに腰掛ける。
傍らに置いてあるマタニティ雑誌を所在なくパラパラと眺めている時、ふとスカートをこっそりめくってみた。
身体のあちこちにつけられたあの夜の痕跡は、今は曖昧な輪郭のくすんだ赤みがうっすらと残るだけだ。
ここに篠田がキスしたんだなとぼんやり考えながらその跡を指でなぞり、重いため息を漏らす。
篠田は水曜から一週間の予定で米国出張に出てしまって不在だ。
「全然、知らなかったな…」
月曜、火曜と篠田の姿を見る度に動揺を隠して会社の時間をやり過ごしていた私は、水曜当日にそのことを知り、ホッとするはずが妙な寂しさに襲われていた。
私達は一体どういう関係なのだろう、と。
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