セフレの定義

20/22
前へ
/22ページ
次へ
その週の木曜日、一週間の出張を終えて篠田が出社してきた。 いつもより一本早い電車に乗ってしまったのは、早く彼の姿を見たいから? 篠田は出張の疲れも見せず、早朝から普段通りの淡々とした様子で山積みの仕事を片付けていた。 その姿をパソコン越しの視界に入れ、小さく小さくため息をつく。 ここ数日の迷子のように不安だった心が不思議に鎮まるのと裏腹に胸は動悸を乱していて、そんな自分に戸惑った。 いつもギリギリで出社してくる小椋さんが今日に限って早いのも、きっと彼が理由だろう。 小椋さんは篠田の嘘を問い詰めるつもりだろうか? あの時、彼を庇う言い訳が上手にできなかった私はそれが気になっていた。 小椋さんにあの話題で篠田に突っ掛かって欲しくなかったから。 二人で私を否定する会話なんかして欲しくない。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2865人が本棚に入れています
本棚に追加