セフレの定義

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その日の夕方。 篠田の横にくっついて何やら喋りながらぐずぐずと退社を粘る小椋さんのせいで、なかなかメールすることが出来ない。 送れば、送信元の名前を見られてしまうだろう。 「早く…」 保留の仕事を幾つか片付けながら、うんざりして待つ。 女の勘でも働いたのか、小椋さんは妙にしつこかったけれど、篠田が何かニ、三言告げると、途端に嬉しそうな表情で飛び跳ねるように帰っていった。 また前の管理部女子の時みたいに食事の約束でもしたの? きっと今までずっと私の正面で繰り広げられてきた光景なのに、意識の外にあると見えないもので。 怜一色だった十年間が過去になりつつあるのを不思議な感覚で受けとめる。 “もうすぐ出るけど大丈夫?” “後から行くので先に待っていて下さい” 返信を確認すると、パソコンの電源を落とした。 かつてあの席にいた怜とこっそり目配せをし合っていた頃を懐かしく思い出しながら。 それはモノクロ写真のように少しずつ色彩を消していた。
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