セフレの定義

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あの翌朝、目を覚ました私の隣には前回同様、篠田の姿はなかった。 彼が寝ていた跡にそっと顔を伏せてみたけれど、そんな自分が痛く思えてゴロンとまた元に戻る。 全然寒くないのは、やはり前回同様、空気が乾燥しない程度にエアコンが動いているから。 確か昨夜は玄関から一気に行為にもつれ込んだはずなのに、いつ点けたのだろう? そろそろと身体を起こして部屋を見回すと、玄関からベッドまで散らかしていたはずの衣服が椅子にかけてあった。 悪趣味に下着を一番上に置くところが、人を辱めて喜ぶ篠田らしい。 衣服を身につけ、そっと部屋を出る。 前回は早業で追い出されただけに、まるで初めての家のように慣れない気分だ。 でも家の中にまったく篠田の気配がないので、とりあえず顔を確認しようと洗面所へと向かった。 「何なのよ、これは…」 鏡を見た私は思わず呻いた。 泣いて腫れた目の下には取れたマスカラがこびりつき、化粧を落とさず寝た三十路肌はカサカサだ。 頬が滑稽な縞模様なのはバーで流した涙の跡だろう。 これはとにかく洗顔しなければ。 男物の洗顔料でも構わないと、戸棚の扉に手をかけた私はふと停止した。
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