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ここで私は回想を中断して、後悔のため息をついた。
…あの時、見ておけばよかった?
その時の私には、その洗面台の扉がパンドラの箱に思えてしまったのだ。
もし私がここの住人の恋人なら、お泊まり道具はここに入れるだろう、と。
開ける?開けない?
いや、何かを見てしまったからと言って、私がショックを受けることはないはずだ。
そう言い聞かせても手は動かず、しばし悶々と悩んだ末。
結局、タイミング良く玄関ドアの音がしたことを理由に、私はあの扉を覗かなかった。
篠田は週末は買い置きが切れがちだとかで朝食を買いに出ていたらしい。
普段通りの淡々とした態度ながら、その朝の篠田は私を追い出そうとはしなかった。
なのに、今度は私が駄目だった。
前夜の自分と普段の自分と、どちらの自分でいればいいのか分からなくなった…のかもしれない。
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