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『何で私だけいつも牛乳なの?』
『カルシウム不足かと』
『悪かったわね、年増で』
『俺はそこまで言ってませんが』
男性との朝には慣れているはずなのに。
朝食の間、こんな会話しかできないのは、おそらく私の悲惨な顔、二日続きの服という女王にあるまじき身なりのせいだとこじつけた私は、用事があるからと早々に篠田宅を逃げ出した。
話すべきことも話さず、確かめるべきことも確かめないまま。
今思えば、その場で話さなければチャンスはないのに。
ただ、私は篠田とどうなりたいのか、自分でもよく分からなかった。
「ねぇ、美紀。この間の新年会でさ、小椋さんって全然駄目だったんでしょ?」
お昼を食べ始めた食卓で、梨香子の出した話題にウッと詰まる。
「……駄目って何が?」
「篠田君よ!すごい気合いだったのにさ、結局進展なかったんだよね?」
「ああ…そうみたいね」
「あの子、顔は可愛いじゃん?
篠田君のタイプじゃないのかな」
「さあ…」
気まずい話題を適当にやりすごそうと思っていた私に笑顔で爆弾を落としたのは、一緒に食卓を囲んでいる旦那様の相原君だった。
「篠田先輩、彼女いるらしいよ」
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