彼のキス、課長の提案

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「はい、先輩に土産です。 シュガーリップ、知ってますか? 砂糖入りの」 「あっ!これ、雑誌で見たの!」 ポンと手渡された包みに思わず声を上げた。 ニューヨークで人気だとかの、オーガニック素材でできた砂糖入りの甘いリップ。 「ありがとう!」 喜びかけて、ふと気になった。 「これ、小椋さんにもあげるの? 薬入りのアメってこれのこと?」 「違いますよ」 篠田が呆れたように言った。 「小椋に薬入りのアメを与えるのは先輩の仕事でしょう。 それは先輩に選んだんですよ」 「ありがとう…」 「やさぐれ者にはこれかなと」 「一言余計なのよ」 怒ったふりはしたけれど、嬉しかった。 私のために選んでくれたもの。 それだけで、くさくさしていた心が甘くふんわりした。 「嬉しい…。 これ、使ってみたかったの」 キャップを取ると、ほんのりと柑橘系アロマのいい香りがする。
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