彼のキス、課長の提案

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「嫌な味じゃないですか? 外国製品だからそこら辺が怪しいなと」 「ううん、美味しい。 味、知らないで買ったの?」 「こんなの、男が試してたら気色悪いじゃないですか。 店に居るだけで微妙だったのに」 「アメリカなら何でもありじゃない?ゲイ多いし」 何を思い出したのか、珍しく篠田が顔をしかめたので思わず笑ってしまった。 「まあ、不味くなくてよかったです」 「ありがとう。…香りも好き」 こんな小さなリップ一つで幸せな気分になれるなんて、やっぱり私はまだ女の子なんだなと思う。 「でもこれ、つい舐めちゃいそうね…」 篠田を笑顔で見上げた私の言葉は、小さくなって途切れた。 私を見下ろす彼が、真面目な表情を浮かべていたから。
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