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「じゃあ今回は小椋さんということで検討するね。
亀岡さんの推薦なら仕方ないな」
「はい。よろしくお願いします」
「亀岡さん、本当に無理なの?
君なら間違いないのに」
「ごめんなさい。なかなかスケジュールが調整できなくて。
それに変化がないと読む側もまたこの人?ってなりますから」
「でもねー…」
「彼女、華やかだから写真映えしますよ。
ではそういう方向で。是非ご検討よろしくお願いします」
渋る担当者に笑顔で頭を下げて広報室を出ると、廊下で一つ大きくため息を吐いた。
篠田とキスした夜からしばらくが過ぎた。
あれから篠田が言った“薬入りのアメ”のアドバイスをあれこれ悩んだ末、効果的と考えたのが女性誌の取材対応だ。
タイミング良く私に依頼が入ったので、今回は小椋さんに代役を務めてもらおうと、部長には既に許可を貰ってある。
広報から承諾が下りたら、
あとは本人に告げればいい。
有頂天になる姿を思い浮べると、余計に溜め息が漏れる。
「うまくやってよ、小椋さん…」
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