彼のキス、課長の提案

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正直、かなり不安だ。 写真撮りは問題ないだろうけれど、彼女は肝心の仕事についてきちんと骨のある語りができないだろう。 それが“薬”になればと思う。 張り切って臨んだ晴れの場で、自分の中身の薄さを自覚して発奮してくれないかと。 とはいえ、広報室の面子を潰すといけないので、小椋さんに反発されても事前に相当レクチャーしなければならないだろうけれど。 それでも駄目なら、後から内容を差し替えるという手段もある。 「自分でやった方が百倍早いわ」 一人になったエレベーターの中で首を回しながら小声でぼやく。 でも、この本音を越えることが私には必要なのだろう。 頼りない部下に任せて、一緒に恥をかく覚悟が。 篠田と話して以来、あの時に部長が私に言ったことをもう一度振り返る謙虚な気持ちを持てるようになった気がしていた。
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