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「詳しい事情は知らないけど、子供はいないらしいよ」
「へぇ…」
何ともコメントしづらい。
「バツイチでも超優良物件よね。
37才営業エースで米国赴任予定、しかも紳士で超イケメン。
公になったら争奪戦始まるね」
「…そうね」
「ふふ…今晩絶対、何かあるよ」
「だから仕事の話だってば」
「どうかなー?後で報告してね。
……あ、言い忘れた」
ニヤニヤ笑いながら椅子ごと戻りかけた梨香子がまた近づいて耳打ちした。
「課長、いっつも美紀のこと大絶賛してるよ」
「もう…うるさいのよ」
梨香子を睨みつけてから定時に向けて仕事を片付け始めたけれど、手を止めて端正な姿をパソコン越しに眺めた。
課長、離婚してたんだ…。
ぼんやりと課長を眺めていた視線をふと逸らした時、篠田と目が合った。
(……何よ)
最近は前より篠田の視線が和らいだ気がしていたのに、完全無視で逸らされてムッとする。
彼の横にはまだ小椋さんが張りついたままで。
今晩、あの二人はどこに行くんだろう?
そればかりを気にする自分が許せなくて、また課長に視線を戻した。
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