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「仕事は相変わらずです。
ただ、立場が変わったことにきちんと対応できなくて…」
「ああ、部下の扱い?」
「はい。…隣の部から見ても分かるほど悪目立ちしてますか?」
「いやいや、そうじゃないよ。
小椋さんでしょ?
彼女を扱うのは大変そうだなと。
よければ話聞くよ」
優しく尋ねてくる課長につられ、小椋さんに関して部長に言われたことを打ち明けた。
ただしそれは具体的な方法論の相談で、篠田の時みたいに寄り掛かるような愚痴や弱音は出てこなかったけれど。
課長のくれた助言はさすが管理職、どれも的確だった。
でも感謝を告げると、課長自身は苦笑いで首を振った。
「僕の答えは綺麗事かもね」
「そんなことは…」
「僕は部下に恵まれてるから。
片桐君と篠田君なんて、指導の必要もない完成形だからね」
二人の名前にピクンと肩が上がる。
…そうだ。
この人は私が恋した二人の上司なんだと、今更ながら気付く。
そう思うと、特別な信頼感を持ってしまいそうだ。
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