彼のキス、課長の提案

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「でもそれは君のせいじゃない。 彼は君をリードして守っていくには純粋すぎたんだと思うよ」 分かる気がする。 篠田に感じた寄り掛かりたくなる衝動を、怜に感じたことはなかったから。 怜もまた、私を守りたいと思えなかったのだと。 「僕は彼みたいな聖人君子とは程遠い腹黒だよ。 君に断るチャンスを与えないところ。あと、弱り目を狙うところ、とかね」 「正直ですね」 冗談混じりに手の内を明かす正直さに苦笑いしながら、なるほど、と思う。 話をする中で時折感じた獲物を追う目は、どうやら気のせいではなかったらしい。 優しいオブラートに包みながら、すべてを見通し大人の提案をしてくるこの人は冷静なハンターだ。 「自分を飾るつもりはないよ。 僕と片桐君はよく比較されるけど、片桐君の代わりにはなれない。 だけど、僕は君をいろんなものから守ってあげられる」 「いろんなもの?」 「君のシェルターになってあげられるってこと」 思案顔の私を見て微笑むと、課長はそろそろ出ようか、と上着を取って立ち上がった。
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