彼のキス、課長の提案

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「リセット、か…」 課長にタクシーで送り届けられた後、お風呂に浸かりながら言われたことをぼんやりと振り返った。 課長は、仕事は私の望むまま、 自由にして欲しいと言っていた。 アメリカ赴任中はやむなく休職になるけれど、リセットや息抜きがあってもいいんじゃない?と。 浴室の鏡の水滴を拭い、そこに映る33才の女の顔を見つめる。 美容には手を抜いてこなかったけれど、若さは永遠ではない。 重ねた年齢はきっと気付かぬうちに忍び寄ってきているのだろう。 不安なのは、孤独だから? 年を重ねる私をありのままに愛してくれる存在がいたなら、きっと私は何も恐れず立ち向かえるのに。 三十代半ば。 ふと立ち止まりたくなる年齢。 懸命に走り続けてきた二十代を、 正しいと信じた人生の選択を、 ふと自問する年齢。 これでよかったの?と。
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