彼のキス、課長の提案

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“僕は腹黒だよ――弱り目を狙うところ、とかね” 恋に破れ、仕事で立ち止まる私の揺らぎを課長はきっと見抜いているはずだ。 “僕は君のシェルターになってあげられる” 課長がくれるのは、迷路から私を逃してくれる安穏の場所。 きっと彼は女の愛し方を知っている人だから、身を任せれば私も課長を愛するようになると思う。 ……篠田を忘れて? 水滴を纏った身体を指でなぞる。 篠田のつけた肌の跡はとっくに消えてしまったけれど、彼はどうしても消せないものを私の中に刻み付けた。 理想の幸せへと着実に導いてくれる手と、 報われない苦しみをくれる甘いキスと、 私はどちらを掴むべき?
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