2925人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
“僕は腹黒だよ――弱り目を狙うところ、とかね”
恋に破れ、仕事で立ち止まる私の揺らぎを課長はきっと見抜いているはずだ。
“僕は君のシェルターになってあげられる”
課長がくれるのは、迷路から私を逃してくれる安穏の場所。
きっと彼は女の愛し方を知っている人だから、身を任せれば私も課長を愛するようになると思う。
……篠田を忘れて?
水滴を纏った身体を指でなぞる。
篠田のつけた肌の跡はとっくに消えてしまったけれど、彼はどうしても消せないものを私の中に刻み付けた。
理想の幸せへと着実に導いてくれる手と、
報われない苦しみをくれる甘いキスと、
私はどちらを掴むべき?
最初のコメントを投稿しよう!