2967人が本棚に入れています
本棚に追加
その指先のせいで余計に鮮明になったあの夜の記憶を払うべく、また話を元に戻して喋り始める。
「…それでね。電車乗ってるって嘘、私は知らないってごまかしちゃったんだけど」
「大丈夫ですよ。
俺には聞いてこないでしょう。
女の攻撃は女に向きますから」
「…呆れた腹黒ね」
「女の特性を指摘しただけです」
篠田は私にお箸を渡しながら軽く笑った。
「で、先輩が言い過ぎたというのは?」
「篠田君には直接関係ないの。
話が逸れた後に揉めたから」
「どんな話題?」
「それは…」
後半部分は正直知られたくない。
言ったことも、言われたことも。
「私みたいにはなりたくないとか…。まあそんなこと」
「その程度で?
先輩なら軽くいなせるのに」
「その程度って!仕事にしがみつく年寄り亀とまで言われたのよ」
小椋さんの味方をされたようでついムッと言い返すと、篠田が吹き出した。
最初のコメントを投稿しよう!