彼のキス、課長の提案

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その指先のせいで余計に鮮明になったあの夜の記憶を払うべく、また話を元に戻して喋り始める。 「…それでね。電車乗ってるって嘘、私は知らないってごまかしちゃったんだけど」 「大丈夫ですよ。 俺には聞いてこないでしょう。 女の攻撃は女に向きますから」 「…呆れた腹黒ね」 「女の特性を指摘しただけです」 篠田は私にお箸を渡しながら軽く笑った。 「で、先輩が言い過ぎたというのは?」 「篠田君には直接関係ないの。 話が逸れた後に揉めたから」 「どんな話題?」 「それは…」 後半部分は正直知られたくない。 言ったことも、言われたことも。 「私みたいにはなりたくないとか…。まあそんなこと」 「その程度で? 先輩なら軽くいなせるのに」 「その程度って!仕事にしがみつく年寄り亀とまで言われたのよ」 小椋さんの味方をされたようでついムッと言い返すと、篠田が吹き出した。
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