彼のキス、課長の提案

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「地雷ですか? どのワードかは言いませんが。 あれ可愛いじゃないですか」 「笑わないでよ。バカにして」 初めて見る篠田のまともな笑顔がこんな話題だなんて。 「元はというと篠田君のせいよ」 「俺に直接関係ないんでしょう? で、先輩は何と?」 小椋さんの口から派手に脚色されて篠田の耳に入るぐらいなら、自分で白状した方がましだ。 「…能力もやる気もない人間は、せいぜいしがみつく男でも漁ってなさいって」 「見たかったな、その喧嘩」 また吹き出した篠田に、苦笑いで付け加える。 「上司失格よね。 ……部長から注意を受けたの」 苦笑いが溜め息に変わった。 「部長の耳に入ったんですか?」 「米州部に異動したいとね。 小椋さんが申し出たらしいの」 「それはいつものことでは? 異動異動って年中騒いでますよ」 「今回の理由は今までと違うの。 上司と合わないって。私のこと」 そこで部長から受けた叱責の内容を篠田に打ち明けた。 年下で、しかも微妙な関係。 頼りたい相手ではないはずなのに。 でもこうして彼に話してしまうのは、どこかで私は彼が解をくれる人だと信じているのかもしれない。
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