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「……俺は意見できる立場ではないですが」
私の話をずっと黙って聞いていた篠田が、ようやく口を開いた。
「部長の意見はもっともですが、俺はまるっきり同意ではありませんね」
「どういう点が？」
「部下に仕事への正しい姿勢を教えるのは当然でしょう。
抑えつけと呼ぶのは酷では？
しかも着任したこの一年足らずの期間で」
「……」
「結局、部長は聞き分けのいい方に頼っているようにも思えます。
先輩が上司である以上は仕方がないことなんですが」
口に出せなかった反論を他人が代弁してくれただけで、妙にすっきりと素直に反省できる気がした。
「私も工夫が足りなかったの。
一本調子で押しつけたから」
「でも、もしあのまま小椋が他所に行ったら苦労するでしょう。
先輩が指導したことは間違ってないと思いますよ」
「そうかな…」
普段と違って、
篠田は思いがけず優しかった。
そんな不意討ちの優しさに、
ふと羽を休めたくなる。
「ずっと気を張ってきたの。
失望させちゃいけないって」
周囲や上司、そして怜にまでも。
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