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「……小椋のことですけど」
店を出て路地を戻りながら篠田が口を開いた。
「勢いはいい奴だから、味方につければいい方向に働きますよ」
「味方にって…無理よ」
「正攻法で駄目なら、アメとムチで」
「ご機嫌を取れと?」
「いや。ただご機嫌を取るんじゃなくて、例えばアメに薬を入れるとか。自発的に頑張れる薬を」
「アメに薬、ねぇ……」
「まあ、今回みたいなことがないよう、俺も適当にあいつのご機嫌とっておきますよ」
篠田が小椋さんのご機嫌を?
やっぱり二人で会うってこと…?
篠田の言葉に思わず顔を上げた。
「そうだ。アメといえば…」
口にしようかと思ったのに、篠田は私から顔を逸らしてコートのポケットを探り、小さな包みを取り出した。
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