素肌を彼に

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*** その夜。 篠田を気に掛けながら、私は予定通り同期の面々との女子会に来ていた。 皆で集まるのは久々だ。 梨香子のつわりのせいもあったけれど、それ以外のメンバーも婚約したり転属したりとバタバタしていたから。 「あのね。 今日は私から発表があるんだ」 話が途切れた時、リーダー格の美香が妙に改まって切り出した。 「……私、六月で退職することになりました」 普段は下ネタで騒いでばかりの美香が今日は少し控えめだなとは思っていたけれど。 「えーっ?なんでよ! ずっと居るって言ってたのに!」 「寂しいじゃんか!」 美香の言葉から一瞬おいて、皆が騒ぎ始めた。 「実は私、妊娠してるんだ。 最近わかったんだけどさ」 皆が喋り止んだ。 「私って美紀や梨香子と違って縁故の事務職じゃん? 立場弱いんだよね」 縁故の事務職は結婚したら退職させられるのがうちの会社の暗黙のルールだ。 理不尽とはいえ、今でもそういう風潮が続いている。 「だから今までバレないように入籍しないでやってきたんだ。 みんなと一緒に居たかったし、旦那も稼ぎがまだ少ないし」
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