素肌を彼に

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「でも純ちゃんは気にしててさ。 妊娠したらちゃんと籍入れようって二人で決めてたんだ」 彼の“純ちゃん”が司法試験に合格するまでずっと支えてきた美香は、試験に合格してもまだ司法修習生で収入の少ない彼のため、入籍を先延ばしにして働き続ける道を選んだ。 「籍なんか気にしないって言ってきたけど、子供、本当は欲しかったんだよね。 だから、会社辞めるのは寂しいけど、やっぱり嬉しい」 そこまでじっと耳を傾けていた皆は、美香が嬉しそうに笑ったのを見て一斉に拍手した。 「おめでとう! 私らも寂しいけど嬉しいよ」 「美香がママって想像できんわ」 「超似合わない」 「子供がかわいそう」 「うるさいよ」 いつも姐御肌で今まで一度も涙を見せたことのなかった美香が、皆らしい雑な祝福に泣き笑いしていた。 美香もここに集まった面々も、強く見える女ほど本当は弱さや繊細な女心を内に隠しているんじゃないかと思う。 次々と結婚していく友人達を見送りながら漠然と心にのしかかる不安と焦りと孤独感。 私達に共通するものかもしれない。
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