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「……ごめん。
私、用事を思い出しちゃった」
前を行く皆を呼び止めた。
「えー、美紀行かないの?」
「仕事?戻るの?」
「ああ…うん、ちょっとね」
「美紀はバリキャリだからなぁ。
まあ、美紀は会社やめないで居てくれるもんね。また今度ね」
「あんまり遅くまで仕事しちゃダメだよー」
「ごめんね。
みんなも飲み過ぎないようにね」
ほんの少しの後ろめたさと共に皆に手を振り、路地へと足を踏み入れる。
暗い路地を進むにつれ、
足は先へ先へと急ぎ始めた。
本当に店に入るかどうかは決めていなかった。
ただ篠田の面影に触れたくて。
でもそのバーの灯りを見た時、やっぱりそのまま踵を返すことができなかった。
しばらく迷った末、騒めく動悸を鎮めるように深呼吸して、重く厚い扉を両手でゆっくりと押した。
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