素肌を彼に

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篠田はまだ会社だろうか。 もう帰った? それとも、誰かと? 一人でいる時、一度ぐらい私を思い出してくれたことはある? “好きな人と結婚して子供を授かるのって、星を掴むようなもの” 結婚や子供まで高望みしない。 一瞬でいい、好きな人に思ってもらえる、その奇跡が欲しかった。 グラスを揺らしながら、篠田が教えてくれたこのお酒の意味を思い出す。 かつて私が描いた“完璧な愛”は 皆が羨む結婚に集約されていた。 最高の相手との絶対的な安定。 でも今の私には、それが空虚な器に思えた。 それだけじゃ足りないことを自覚してしまったから。 保身に走らずプライドも何もかも捨てて、この氷みたいに消えて無くなっても構わないと溶けることができてこそ、完璧な愛じゃないの?と。 年齢と逆行する自分の青臭さに呆れてしまうけれど。
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