素肌を彼に

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「アメリカかぁ…。もし美紀が抜けたらアジア部は大打撃ね」 「梨香子がいるじゃないの」 「私もじきに産休だよ」 「そうよね…」 課長を選ばなければ、私は親友のいなくなったアジア部で今と同じ日常を繰り返していくのだろう。 皆が結婚や出産の岐路を曲がって、私だけになっても。 ……ひょっとすると十年後も。 時々、自分が何を目指しているのか分からなくなることがある。 「あ。やっと帰ってきたよ、小椋さん」 梨香子の声で顔を上げると、いつものごとく化粧ポーチを手にした小椋さんが大部屋の遠い入口から入って来るのが見えた。 「ねぇ、本当に広報の取材、小椋さんにさせる気?大丈夫なの?」 「うん。 私もこっそりフォローするから」 広報からは承諾が下りたので、 今日にも本人に連絡来るはずだ。
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