素肌を彼に

5/29
前へ
/29ページ
次へ
「でも、どういう風の吹き回し? ヘタすると美紀も恥かくのに」 「うん…。色々アドバイスを受けて考えたの」 「ああ、課長に?」 「ううん。別の人…」 正面の席を眺めた。 私の一番帰りたい腕。 でも、一番信じちゃいけない腕。 「誰に?珍しいね。 美紀がアドバイスを請うなんて」 質問には答えず、唇に触れた。 「まあね。とにかくこれが小椋さんの刺激になって、やる気を出してくれないかなと思って」 「でもたぶん美紀に勝った!って調子乗っちゃうよ? 美紀の口添えも知らずに」 「ばれたら逆効果かしらね」 「いいんじゃない?それも」 クスクス笑いながら梨香子が椅子を転がして戻っていく。 「あ、あの子ポーチ変えたんだ。 あの巨大なハートのチャームのポーチじゃなくなったわ」 この時の私は苦笑しながら聞き流しただけで。 梨香子の言葉がある事実に結び付くなんて気付くはずもなかった。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2681人が本棚に入れています
本棚に追加