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「でも、どういう風の吹き回し?
ヘタすると美紀も恥かくのに」
「うん…。色々アドバイスを受けて考えたの」
「ああ、課長に?」
「ううん。別の人…」
正面の席を眺めた。
私の一番帰りたい腕。
でも、一番信じちゃいけない腕。
「誰に?珍しいね。
美紀がアドバイスを請うなんて」
質問には答えず、唇に触れた。
「まあね。とにかくこれが小椋さんの刺激になって、やる気を出してくれないかなと思って」
「でもたぶん美紀に勝った!って調子乗っちゃうよ?
美紀の口添えも知らずに」
「ばれたら逆効果かしらね」
「いいんじゃない?それも」
クスクス笑いながら梨香子が椅子を転がして戻っていく。
「あ、あの子ポーチ変えたんだ。
あの巨大なハートのチャームのポーチじゃなくなったわ」
この時の私は苦笑しながら聞き流しただけで。
梨香子の言葉がある事実に結び付くなんて気付くはずもなかった。
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