素肌を彼に

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翌日の金曜日の朝は篠田は在席していた。 慌しく留守中の案件を片付ける彼の電話の声を、騒めきの中から拾い上げる。 一週間ほとんどまともに席にいなかったから、朝から顔を見ることができただけで気分が浮き上がった。 私もしばらく雑用を片付けた後、少しブレイクしようと立ち上がった。 「ちょっとコーヒー買ってくるわね」 「うん。打ち合わせは九時半からだからゆっくり飲んでくれば?」 梨香子に手を振り休憩室に向かうと、廊下で怜とばったり出くわした。 同じ会合に出席予定で、早めにやってきたらしい。 「おはよう。深沢さんは?」 「ミーティングルームで羽鳥課長と喋ってるよ」 「何の話?春の異動?」 「うん。だから部外者の僕は追い出されて出てきたところ」 「じゃあ一緒にコーヒー飲む?」 怜と二人で休憩室の長椅子に腰掛ける。
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