もう恋はしない

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多忙な年度末を乗り切り、 もうすぐ四月という頃。 羽鳥課長は赴任を控えているのでさらに忙しそうだったけれど、何度か食事に連れていってくれていた。 「今月はあまり誘えなかったね。 僕から申し込んだのに残念だよ。 あと1ヶ月しかないのに」 課長が昔からよく通っているというダイニングバーで、キャンドルの灯り越しに課長に微笑みかけた。 「いえ。お忙しいのに時間を作って下さって嬉しかったです。 会えない時はお電話下さるし」 これは本当だ。 課長と過ごす時間は楽しかった。 包まれる安心感…というのだろうか。 いつも私の気持ちをさりげなく汲んでくれる心地良さは、これまでお付き合いしてきた中でも経験がなかった。 “僕は君のシェルターになってあげられる” 課長の言う通りかもしれない。 破れた恋も、叶わない恋も、 人生に感じる閉塞感と迷いも。 課長はそんなすべてを忘れさせてくれる柔らかなシェルターだ。
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