さよなら、一番好きな人

10/33
2455人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
翌週の金曜日は渡航まであと一週間を控え、課長の送別会が開かれた。 私が課長の傍にいると皆に何かと質問されてしまうので、わざと私達は距離を取り、離れた席で飲むようにしていた。 「ねぇ、美紀。決めたの?」 「うん……」 宴会場の隅の方の席で梨香子に付き合い、オレンジジュースを飲みながら遠目に課長を眺める。 「連休、どうするの?」 課長の渡航日は連休初日。 承諾なら、連休の旅行を兼ねて一緒にアメリカに来てくれと言われていた。 そして、空港で返事を聞くと。 「……正直、迷ってるの」 周囲の反応は様々で。 年齢も年齢だから結婚するだろう、とか。 いや亀岡さんがキャリアを捨てるわけがない、とか。 一方向に勝手に押しつけられないのは有り難かった。 「課長のことは好きだし、一緒にいればこれからもっと好きになると思う。 仕事を休職することも構わない」 「じゃあなんで迷うの?」
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!