2455人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
「……それが恋なのかって言ったら、そうじゃないから」
ずっとずっと、恋をしてきた。
苦しんでばかりだった。
でも、これが結論でいいの?
「世の中、恋して結婚する人ばかりじゃないよ」
「うん」
「後から育つものもあるんじゃない?その可能性さえ感じられたらね。よく知ってる相手だし」
「そうよね」
そう。すべて条件は揃っていて、何も言うことはない、のに。
「ふん、口だけ同意してるよね。
分かるわよ、美紀」
黙って苦笑いする。
「要は何のために結婚するのかってことだよね」
「我が道を行くはずが、やっぱりどこかで焦っちゃうのよ」
「わかる。時期を逃してから後悔したくない、とかね。
あと私の場合、片思いから逃れて楽になりたい的なのもあった」
「梨香子は相原君と実らなかったら他の誰かと結婚してた?」
「うん。そのつもりだった」
遠くの席で欧州部の仲間と騒いでいる相原君を眺めて、梨香子は苦笑いした。
「友則を諦めようと手当たり次第に付き合ってたし、付き合うわけだから当然、身体もね。
悲しいことにそれができちゃうのよね、年を食うと」
図星の話題に黙って頷く。
課長の部屋に行くのは明日だ。
最初のコメントを投稿しよう!