さよなら、一番好きな人

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「……それが恋なのかって言ったら、そうじゃないから」 ずっとずっと、恋をしてきた。 苦しんでばかりだった。 でも、これが結論でいいの? 「世の中、恋して結婚する人ばかりじゃないよ」 「うん」 「後から育つものもあるんじゃない?その可能性さえ感じられたらね。よく知ってる相手だし」 「そうよね」 そう。すべて条件は揃っていて、何も言うことはない、のに。 「ふん、口だけ同意してるよね。 分かるわよ、美紀」 黙って苦笑いする。 「要は何のために結婚するのかってことだよね」 「我が道を行くはずが、やっぱりどこかで焦っちゃうのよ」 「わかる。時期を逃してから後悔したくない、とかね。 あと私の場合、片思いから逃れて楽になりたい的なのもあった」 「梨香子は相原君と実らなかったら他の誰かと結婚してた?」 「うん。そのつもりだった」 遠くの席で欧州部の仲間と騒いでいる相原君を眺めて、梨香子は苦笑いした。 「友則を諦めようと手当たり次第に付き合ってたし、付き合うわけだから当然、身体もね。 悲しいことにそれができちゃうのよね、年を食うと」 図星の話題に黙って頷く。 課長の部屋に行くのは明日だ。
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