さよなら、一番好きな人

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けれど重い木の扉を押して店内に入り、まっすぐカウンター席に向かおうとすると、奥から派手な声が飛んできた。 「亀岡先輩?!」 「おおー、女王様だ」 「えっ…?」 声のするテーブル席の方を目で捜し当てると、そこには驚いた顔で半分立ち上がりかけた小椋さんと中野君、そして座ったまま表情の読めない篠田がいた。 この店に来ていたなんて。 「亀岡先輩、こっちこっち!」 かなり酔っ払った様子の中野君の大声を無視する訳にもいかず、困惑しながら近づいた。 「先輩、一人ですか? どうぞここ座って下さいよ!」 中野君が自分の隣を盛んに勧めてくる。 そこは篠田の正面。 篠田の隣は不満顔の小椋さん。 「えーやだ、亀岡先輩もなんて」 「うっさい小椋」 こんな居心地の悪い状況なんて今すぐにも回れ右をして帰りたかったけれどそうする訳にもいかず、決まり悪い思いをしながら勧められるまま席に座った。
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